第二十五回連載資料

今回は「ナイト・ドライバー」(1976 アタリ)を取り上げました。
特徴はなんといっても、三次元の視点で運転をすることができるという点です。これだけでもこのゲームの価値があります。


紫と黄で流線型といいますか、スピーディな車を中心にデザインがされたフライヤーです。車はランプをつけていて、いかにもナイト、です。
プログラマーはデーヴ・シェパード、デザインはスティーヴ・メイヤー、ロン・ミルナー、テリー・フォーラーの3名で、メイヤーとミルナーAtari 2600の開発にも関わっている人物です。シェパードは 「フライボール」という1976年の野球ゲームでもプログラムを組んでいます。
  
MSXという1980年代に登場した廉価なパソコンがありますが、そのゲームソフトとして「ナイト・ドライバー」が販売されました。これには「アーケード・モード」というのがあり、筐体で出た当時をよく再現した雰囲気でプレイすることができます。わたしはこれではじめてプレイしたのですが、上級者(エキスパートモード)はコース取りがかなりシビアです。ギアはローとハイの2つしかありませんでした。

ゲーム画面をみると、白いスポットの動きが非常になめらかで完成度の高さがうかがえます。
  
こちらは筐体の紹介も含めているものです。立って運転するのでアップライト筐体ですね。

  
こちらが「ナイト・ドライバー」の本領というべき筐体で、ごらんのように実車に似せてデザインし、ドライブシミュレーターのようになっています。

他の画像をご覧になりたい方はこちらのサイトをどうぞ。
http://www.pinballrebel.com/arcade/atari/nightdriver/nightdriver.htm
  
こちらはAtari 2600というゲーム機のカセットとして販売されたヴァージョンですが、樹木が出ています。グラフィックは荒い感じになっており、筐体(上)のほうがきれいに見えます。

  
このゲームで動く白いスポットたちはラスタースクロールという表現技術で動いています。これは走査線ごとにスクロールさせるテクニックです(走査線はテレビ画面を構成するときに左右に線状に走る電気信号の線です。)この映像はラスタースクロールの実例です。横になめらかに動いていますが、このようなテクニックで白いスポットを動かすわけです。

  
ところで本文でも少しふれましたが「ナイト・ドライバー」の販売をめぐる微妙な問題については以下のサイトで考察されていますので、あわせてご覧ください。
http://www1.odn.ne.jp/beni/game/taka_2/zzzap.html

  

ゲームの舞台となっているであろう高速道路については、1930年代から計画がされており、ナチス・ドイツが世界ではじめての高速道路を完成させています。
  
アメリカではゼネラル・モーターズによる高速道路計画があります。
http://www.archive.org/details/generalmotorshig00geddrich
これを中心になってまとめあげたのが、工業デザイナーのノーマン・メランクトン・ベル・ゲデスという人物です。ゲデスの高速道路は以下の "Highways and Horizons"でイラストがみられますが、流線型に関心をもっていたデザイナーで、高速道路も流線型でなめらかにカーブする道があります。「ナイト・ドライバー」のゆるやかなカーブと共通するものがあります。
http://www.columbia.edu/cu/gsapp/projs/call-it-home/html/chapter10.1.html
    
ここから話は大きくそれますが、ノーマンは舞台デザイナーでもあり、娘がバーバラ・ベル・ゲデスという女優なのですが、わたしは彼女をとおしてノーマンを知りました。
舞台デザイナーとしてのゲデスとしては、1939−40年、ニューヨークの万博を記録した映像があります。
http://www.archive.org/search.php?query=subject%3A%22World%27s%20Fairs%3A%20New%20York%2C%201939-40%22
とくに[Amateur film: Medicus collection: New York World's Fair, 1939-40] (Reel 2)に注目です。
http://www.archive.org/details/Medicusc1939_7
この映像の14:40あたりに「クリスタル・ラッシー」が出てきます。これはゲデスがデザインしたパヴィリオンでトップレスの女性が鏡で張り巡らされた空間を踊るというものです。


  
作家の荒俣宏さんのブログによれば、このクリスタル・ラッシーについて映像について紹介しつつ
http://blogs.yahoo.co.jp/aramata_hiroshi/14758104.html
『万博とストリップ』に詳しく書かれてあります。

万博とストリップ ―知られざる二十世紀文化史 (集英社新書)

万博とストリップ ―知られざる二十世紀文化史 (集英社新書)

  

ビル・ヴィオラの「ナトリウムランプ」です。

http://www.eai.org/eai/title.htm?id=3483
深夜から早朝にかけてマンハッタンの工業地で撮影したものらしく、ヴィオラはナトリウムランプの光や性質、人々が眠っている時間に光っているという点に惹かれたようです。
この映像はICCという東京の新宿にある施設でみることができます。
http://hive.ntticc.or.jp/about/index_list_collection.php
わたしはそこではじめてこの作品を知りましたが、人の姿はまったくなかったような気がします。
ICCへの行き方はこちらをどうぞ。
http://www.ntticc.or.jp/About/access_j.html